ChatGPTを使えば、コードが書けない人でもアプリを作れます。
ただし、AIに任せるだけで最短距離を進めるとは限りません。
私もChatGPTを使って、クリーニング店の受付、勤怠、会計、包装、工場、外注品管理などのアプリを作ってきました。実際に動くものはできましたが、その途中では、簡単にしたかった仕事が複雑になり、同じような修正を何度も繰り返したことがあります。
結論から言うと、ChatGPTでアプリ開発が遠回りする最大の原因は、AIの性能不足だけではありません。
人間が「何を優先し、どこで止めるか」を決めないまま、AIへ修正を任せ続けること。
この記事では、非エンジニアの店主である私が実際に経験した3つの失敗と、遠回りを減らすために現在使っている手順を紹介します。
中古8万円のパソコンでもAIアプリは作れた
私は北九州市で小さなクリーニング店を営んでいます。エンジニアではなく、プログラミングを専門的に学んだ経験もありません。
使用しているのは、約8万円で購入した中古パソコンです。
このパソコンでChatGPTやCodexを使いながら、店の仕事を助けるアプリを作ってきました。パソコンの詳しいスペックと、実際にできたことは次の記事にまとめています。
一見すごそうですが、古いパソコンです。中古8万円のPCで小さな店のAIアプリを作った話
AIのおかげで、コードが書けない私でも開発の入口に立てました。
しかし、開発を続けるほど、こんな場面も増えていきました。
- 修正した場所とは別の機能が動かなくなる
- 同じ設定を複数の端末でやり直す
- 簡単にしたいのに、新しい操作や管理項目が増える
- 一つ直すたびに確認箇所が広がる
- どのファイルが現在の正解なのか分からなくなる
「AIを使えば速くなるはずなのに、なぜか遠回りしている」という感覚です。
AI生成コードの「ほぼ正しい」が時間を奪う
これは、私だけの感覚ではありません。
Stack Overflowの2025年開発者調査では、AIを使う人の66%が「ほぼ正しいが、完全には正しくない回答」に不満を感じ、45%がAI生成コードのデバッグに余計な時間がかかると回答しています。
AIの正確性を信頼する人は33%、信頼していない人は46%でした。
出典:Stack Overflow Developer Survey 2025(2026年9月6日確認)
また、AI研究機関METRが2025年前半に行った実験では、経験豊富な開発者16人が246件の実務課題に取り組んだところ、AIツールを使った場合の完了時間は平均19%長くなりました。
一方、参加した開発者本人は「AIによって20%速くなった」と感じていました。
出典:METR・Early-2025 AI experienced open-source developer study(2025年7月10日公開、2026年9月6日確認)
ただし、この結果だけで「AI開発は遅い」とは断定できません。METRは2026年2月、新しいCodexなどのエージェント型ツールでは効果が改善している可能性がある一方、選ばれる課題や測定上の偏りが大きく、正確な効果はまだ判断しにくいと報告しています。
出典:METR・2026年追跡報告(2026年2月24日公開、2026年9月6日確認)
AIは使い方次第で、近道にも遠回りにもなるということです。
実際に起きた3つの遠回り
1.簡単に入りたいだけなのに、認証が大がかりになった

- 代替テキスト:数台の端末ですぐ開きたいという希望が、端末ごとの鍵や更新、設定のやり直しへ複雑化する流れ
- キャプション:簡単に使いたいという要望が、端末ごとの設定や更新を伴う大がかりな仕組みへ変わっていきました。
店で使う外注品管理アプリについて、私は「決まった端末から、毎回面倒な入力をせずに使いたい」と考えていました。
ところが相談を進めるうちに、端末ごとの鍵、ブラウザへの保存、セッション更新、管理者による失効管理など、仕組みが次々と増えていきました。
どれも技術的には意味があります。多くの利用者がいるサービスなら、必要になる可能性もあります。
しかし、私の店で使う端末は数台です。
セキュリティを強くするために、店主が複数端末で設定を繰り返し、一つの設定を変えると別の端末から入れなくなる。守るための仕組みが、現場の仕事を止めてしまいました。
そこで、いったん実装方法を横へ置き、このアプリに本当に必要な認証はどこまでかを考え直しました。
AIは「もっと安全にする方法」を出すのは得意です。しかし、こちらが条件を示さなければ、「数台だけで使う小さな店に、そこまで必要なのか」までは判断できません。
2.スキャンを速くするより、スキャンをなくす方が早かった

- 代替テキスト:タグを探して伸ばしてスキャンする方法から、プラス・マイナスボタンと自動連携へ変えた比較図
- キャプション:スキャンを速くするのではなく、スキャンという作業自体をなくす方向へ切り替えました。
工場の進み具合を把握するため、最初は品物のタグをバーコードでスキャンする方法を考えていました。
ところが現場では、仕上げ後のタグが折れ曲がっていたり、服の陰へ入り込んでいたりします。
タグを探す。伸ばす。向きを変える。スキャナーを当てる。
1点なら数秒でも、何十点、何百点と続けば大きな負担です。
ここで必要だったのは、スキャン精度の改善ではありませんでした。
スキャンという作業自体を、なくせないか。
そこで、洗い数と仕上げ数はプラス・マイナスボタンで入力し、包装数は包装アプリから自動連携する方向へ切り替えました。
AIへ「バーコードを読みやすくして」と依頼すれば、読みやすくする方法を考えます。しかし、現場が本当に必要としていたのは、バーコードを読む必要のない仕組みでした。
3.全部入りのレジを作ろうとして、完成が遠のいた
最初は、受付、勤怠、会計、包装、工場など、店の機能をすべて一つのレジシステムへ入れようとしていました。
一つにまとまれば便利に見えます。
しかし、機能を追加するほど、一つの変更がどこへ影響するのか分かりにくくなりました。AIへ渡す情報も長くなり、確認する範囲も広がります。
そこで、勤怠、会計、包装、工場などを別々の小さなアプリへ分けました。
すると、「今回は勤怠だけ」「今日は包装だけ」と範囲を決められるようになりました。
AIにとっても、人間にとっても、仕事は小さく分けた方が扱いやすかったのです。
ChatGPTでアプリ開発が遠回りする5つの原因
私の経験では、原因は主に次の5つです。
- AIは店の現場を見ていない
タグの位置、忙しい時間帯、端末を持って移動する手間までは、こちらが説明しない限り分かりません。 - 条件が足りない部分を一般的な正解で埋める
大規模サービス向けの安全策や構成が、小さな店にも必要とは限りません。 - 必要性の判断より、依頼された変更を優先する
「直して」と言えば、そもそもその機能が必要かを考える前に修正を始めます。 - 会話が長くなるほど、目的と過去の案が混ざる
途中で方針が変わっても、古い条件が残ると整合しなくなります。 - 完了条件と停止条件がなければ修正を続ける
同じ失敗が続いても、新しい修正案を重ね、原因調査へ戻りにくくなります。
AIが怠けているわけではありません。むしろ、頼まれた問題を一生懸命に解こうとします。
その結果、「正しいけれど大がかりな方法」や「目の前の症状だけを直す方法」へ進みやすくなります。
最大の問題は、AIに何を一番大切にするかまで決めさせてしまうことでした。
遠回りを止める7つの手順

- 代替テキスト:原因調査、簡単な3案、人間の選択、最小変更とテスト、同じ失敗2回で停止する5段階
- キャプション:原因調査から始め、一度に一つだけ変更し、同じ失敗が2回続いたら停止します。
私は現在、次の順番で進めるようにしています。
- 最初は原因調査だけ行い、まだ変更しない
- 解決策を簡単な順に3案出してもらう
- 現場の操作が増えない案を人間が選ぶ
- 一度に一つだけ変更する
- 変更前へ戻せる状態を作る
- テストに合格してから次へ進む
- 同じ失敗が2回続いたら停止し、前提から調べ直す
OpenAIのCodex公式ガイドでも、指示には目的、対象となる状況やファイル、制約、完了条件を含め、複雑な作業は実装前に計画させることが推奨されています。
出典:OpenAI・Codex best practices(2026年9月6日確認)
そのまま使える「遠回り防止」の指示文
次の文章の「〇〇」だけを書き換え、ChatGPTやCodexへ最初に渡します。
今回の目的は「〇〇」だけです。
最初は原因調査だけ行ってください。
コード、設定、本番環境は変更しないでください。
解決策を、最も簡単な方法から3案提示してください。
それぞれについて、
・変更するファイル
・既存機能への影響
・現場の操作が増えるか
・元に戻す方法
を示してください。
小規模店舗での使いやすさを最優先します。
新しい認証方式、データベース、サービス、複雑な仕組みは、
私が承認するまで追加しないでください。
私が方法を選んだ後、最小限の変更だけ実施してください。
変更後はテスト結果と差分を報告してください。
同じ不具合が2回続いた場合は追加修正を止め、
前提、作業場所、対象リポジトリ、原因を調べ直してください。
この指示でも、遠回りが完全になくなるわけではありません。
ただし、「とりあえず直して」を繰り返すより、一度止まり、選択肢を比較してから進める方が安全です。
ChatGPTとCodexの役割を分ける
私は現在、次のように役割を分けています。
| 担当 | 主な役割 |
|---|---|
| ChatGPT | 何を作るか、現場の問題、画面構成を整理する |
| Codex | 実際のファイルを調べ、コードを変更し、テストする |
| 人間 | 方法を選び、現場で本当に使えるかを判断する |
ChatGPTとの会話だけでコードを何度も貼り直すと、どのファイルが現在の正解なのか分からなくなりやすくなります。
Codexは、実際のファイルを確認しながら変更とテストを進める作業に向いています。ただし、Codexでも目的や制約を決めずに任せれば、複雑化する可能性はあります。
大切なのは、AIの種類よりも、役割、完了条件、停止条件を先に決めることです。
AIアプリ開発の遠回りを減らす参考商品
ここからは、これからAIでアプリを作る人向けの商品候補です。私がすべてを実際に使用したという意味ではありません。用途と仕様を確認し、必要なものだけ選んでください。
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GitとGitHubを基礎から理解する本
AIにコードを修正してもらうなら、「変更前へ戻せる状態」を作ることが重要です。
GitとGitHubを基礎から学びたい初心者向けの候補です。
いちばんやさしいGit&GitHubの教本 第3版
画像や設計資料を保管する外付けSSD
ソースコードの履歴管理にはGitを使い、画面写真、設計書、書き出したデータなどは別媒体にも保存しておくと、パソコン側のトラブルに備えられます。
Samsung T7 Shield 1TB 外付けSSD
ChatGPTとアプリ画面を並べやすいモニター
AIとの会話、アプリ画面、テスト結果を並べて表示できると、画面の切り替えを減らせます。
27インチ、4K、USB Type-C対応モニターの候補です。
Dell S2725QC-A 27インチ4Kモニター
店舗用品と個人の買い物を分けるAmazon Business
パソコン、SSD、ケーブル、プリンター用紙など、店舗用品と個人の買い物を分けたい事業者にはAmazon Businessという選択肢もあります。
Amazon公式の紹介料率表では、2026年9月6日確認時点で、所定のAmazon Business新規登録と確認完了は1件3,000円、本は3%、パソコン・家電は2%です。条件や料率は変更される可能性があるため、最新情報は公式ページで確認してください。
出典:Amazonアソシエイト・プログラム紹介料率表(2026年9月6日確認)
まとめ:AIは作業者。店の正解を決めるのは人間
ChatGPTやCodexがなければ、コードを書けない私が店舗アプリを作ることはできませんでした。
AIは、作る力を大きくしてくれます。
しかし、作る力が大きくなるほど、次の判断が重要になります。
- そもそも、その機能は必要か
- もっと簡単な方法はないか
- 現場の操作は増えないか
- 失敗したときに元へ戻せるか
- どの状態になれば完成なのか
- どの時点で修正を止めるのか
現場を知っている人にしか分からないことがあります。
タグを伸ばしてスキャンする面倒さ。忙しい時間に一つ操作が増える重さ。複数の端末を持って設定して回る手間。
AIはコードを書けます。
しかし、店の仕事の中で何を残し、何をなくすべきかを決めるのは人間です。
人間の役割は、作業者から「正しさの設計者・最終責任者」へ移っていく。
遠回りしたからこそ、私はそう考えるようになりました。


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